この家で、人生を締めくくる

今から建てるべきか。この場所で暮らし続けるべきか。

人生の後半に差し掛かったからこそ、簡単には決められなかった家づくりです。

「今から建て替えるべきか」「本当に、この予算でいいのか」「この先、何年ここで暮らすのか」

何度も迷い、立ち止まりながら進めた時間そのものが、この住まいの土台になっています。

まずは、どんな判断をして、この家に辿り着いたのか。そこから、お話しさせてください。

私たちが最初にお伝えしたのは、「今日は、決めなくて大丈夫です」という一言でした。

間取りも、広さも、予算も、いったん“決めない”状態のまま、これからの暮らしを一緒に整理するところから始めました。

・雪の日でも、移動が負担にならない動線
・外に出なくても、家の中で完結する暮らし
・寒さを我慢しなくていい室内環境
・日本らしい落ち着きと、海外で慣れ親しんだ合理性の両立
海外での生活を通して身についた「無理のない暮らし方」を、雪国の住まいにどう落とし込むか。そこが、設計の出発点でした。

話を重ねる中で見えてきたのは、「立派な家」ではなく、最後まで、無理なく暮らせる家でした。

私たちは、選択肢を減らすのではなく、残すべき判断を、こちらで引き受けました。

迷いを残したまま進まないことも、設計者の責任だと考えています。

焦らせない。曖昧なまま進めない。ご家族が「これなら大丈夫」と言えるところまで、一緒に立ち止まる。

それが、設計だと考えています。


寒さに耐えるのではなく、暮らしの中心に、暖かさを置く。

海外で暮らしたからこそ、日本で、雪国で、この佇まいに辿り着きました。

終の棲家は、立派さよりも、無理のなさが大切です。

これからの時間を、安心して過ごせるかどうか。そこから一緒に考えます。