二世帯にするかどうかが、最初のテーマだったわけではありません。
この家の出発点は、雪国の冬を、これ以上我慢しない暮らしでした。
このご家族は、すでに二世帯での暮らしを経験していました。親世帯と子世帯。助け合える安心感も、日々の距離感も、すでに分かっていたご家族です。だからこそ、「次の住まいで何を大切にしたいか」は、とてもはっきりしていました。
それは、雪国でも、無理なく、あたたかく暮らせること。長い冬。朝の冷え込み。廊下やトイレの寒さ。雪かきのあとに、体が冷える感覚。二世帯かどうかではなく、毎日の暮らしそのものを、どう楽にできるか。そこが、この家づくりの出発点でした。とはいえ、間取りも、広さも、本当に必要な断熱性能も、雪国での動線を考えたインナーガレージのあり方も、最初から答えが一つに決まっていたわけではありません。何度も話し合い、何度も立ち止まりながら、「この寒さを、どう解決するか」「冬でも、どこまで家の中を快適にしたいか」暮らしを基準に考える時間を、丁寧に積み重ねていきました。その時間そのものが、この住まいの土台になっています。
ご相談に来られた当初、このご家族が抱えていたのは、こんな迷いでした。
・今までの家は、とにかく冬が寒かった
・暖房をつけても、足元や廊下が冷えるのが当たり前だった
・「雪国だから仕方ない」と、どこかで諦めていた
・建て替えの方が結果的に安心なのではないか
・インナーガレージが、冬の暮らしをどこまで楽にしてくれるのか分からなかった
他社では、「この性能なら大丈夫です」「数値は十分ですよ」そう説明されても、その暖かさが、毎日の暮らしでどう感じられるのかが
想像できなかったそうです。ここまで読んで、「うちも、冬がつらい」そう感じた方へ。この家づくりは、そこから始まりました。私たちが最初にお伝えしたのは、「性能の話をする前に、冬の過ごし方を教えてください」という一言でした。
なお、このお施主様は、建設分野で会社を経営されている方でした。だからこそ、数値や仕様だけでなく、「実際の暮らしでどう感じるか」を何度も一緒に確認しました。
暖かさは、数字だけで決まるものではありません。どの部屋を、どの時間帯に、どんな動線で使うのか。雪の日に、どこから家に入り、どこで上着を脱ぎ、どうやって体を温めるのか。そうした暮らしの積み重ねが、雪国の「本当の暖かさ」をつくります。だからこの家では、
・断熱性能の数値だけで判断しませんでした
・暖房の入れ方を、暮らしに合わせて考えました
・インナーガレージも、冬の動線として検討しました
・決断を急がせることはしませんでした
設計者として、「暖かさのつくり方」を一緒に整理する役割を引き受けたのです。

雪の日でも、車から玄関まで外に出ない。冬の負担を、暮らしから減らしました。

暖房をつけた部屋だけが暖かい、そんな家にはしたくありませんでした。家のどこにいても、同じ心地よさが続きます。

朝も夜も、「寒いから我慢する場所」をつくらない。冬の家事動線まで、暖かさの設計です。

廊下や階段が寒い家では、本当に暖かいとは言えません。

冬はしっかり風を防ぎ、使わない季節には、存在を消せる。暖かさと日常の心地よさを両立した、風除室です。
この写真は、「高性能住宅」を見せるためのものではありません。雪国での暮らしを振り返り、寒さに感じてきた不便を一つずつほどき、
その先にたどり着いた体感としての暖かさの結果です。だからこそ、他の家と比べるための写真ではなく、この家族にとっての答えとして存在しています。
暖かさは、性能表の数字だけでは決まりません。
毎日の動き、冬の過ごし方、そこまで含めて考えることで、本当の答えが見えてきます。