「とにかく、冬がつらい」その一言から、すべてが始まりました。
建て替えか、リノベーションか。答えを急げない理由が、この家にはいくつもありました。
暖房をつけても寒い。部屋ごとに温度が違う。廊下やトイレに行くのがつらい。
終の棲家として、これから先もこの状態が続くと思うと、冬が来ること自体が不安でした。そしてもう一つ、相談の最初からずっと揺れていたテーマがありました。建て替えるか。それとも、リノベーションで住み継ぐか。年齢のこと。これからの暮らし方のこと。そして、かけられる予算のこと。「暖かくしたい」だけでは決められない。家族のこれからを、全体で考えて判断する必要がある。ここが、この家のいちばん大事な出発点でした。
「リノベで、ここまで変わるのか」相談の中で、何度も出てきた言葉があります。「リノベーションで、ここまで変わるのか」
・部分的な断熱で足りるのか
・暖房を増やす方が早いのではないか
・費用をかけて後悔しないか
・建て替えの方が結果的に安心なのではないか
性能を上げるほど、工事は大きくなります。でも、中途半端にすると、また冬を我慢する暮らしに戻ってしまう。“建て替えか、リノベか”の迷いも、結局は同じ問いに行き着きます。この先の人生で、冬を我慢し続けないために、どこまで整えるべきか。それを、簡単には決められませんでした。
私たちが提案したのは「暖房を増やすこと」ではありません。私たちが最初に整理したのは、設備の話ではなく、判断の順番です。
・今の家のどこが寒さの原因か
・どこまで直せば、暮らしの不安が消えるのか
・建て替えと比べて、費用と効果のバランスはどうか
・終の棲家として、手入れ・維持が無理なく続くか
その上で提案したのが、断熱性能を等級7まで上げきり、エアコン1台で家じゅうが自然に温まる設計です。
この家では、
・熱が逃げない断熱・気密を徹底する
・暖気が滞らず、家全体に回る間取りをつくる
・寒くなりやすい廊下・洗面・トイレを“通り道”にしない
・「暖かい部屋」と「寒い部屋」をつくらない
という考え方を、設計の軸にしました。エアコン1台で済むのは結果です。狙ったのは、家全体が同じ温度で整う“終の棲家の安心感”でした。そしてこの判断は、「どこまでやるか」を曖昧にせず、設計者として引き受けました。

見た目より先に、暮らしの中で違いを実感する住まいです。

この家の暖かさは、雪の日でも、どこにいても同じだと気づくところから始まります。

冬でも、廊下に出ることをためらわない。その当たり前を、設計でつくりました。
同じ答えはなくても、同じ「決め方」はできますいえづくりに、同じ答えはありません。けれど、同じように年齢・予算・暮らし方を“全体で”整理して、納得して決めることはできます。終の棲家は、暖房の数ではなく、寒さを生まない設計で決まります。
終の棲家は、立派さよりも、無理のなさが大切です。
これからの時間を、安心して過ごせるかどうか。そこから一緒に考えます。